満州事変を機に軍国主義が一段と強まる中、京都帝大教授の娘・幸枝は学友だった野毛を訪ねる。共に自由主義者だった二人は共鳴し合い共に生活を始めるが、野毛は国際スパイとして検挙され幸枝も獄舎に放り込まれる。そして野毛は獄死。傷心の幸枝は野毛の遺骨を抱き、野毛の故郷へ向かうのだった……。
実際にあった滝川事件とゾルゲ・スパイ事件をヒントに作られた反戦色の強い青春映画。黒澤作品にはめずらしく女性が主人公。自立した強く清々しいヒロインの生き方は現代にも充分通じ共感を呼ぶ。戦後第一作目の力作。特にラスト二十分の陰影に富んだ力感あふれる映像は、この作品に賭けた監督の執念を感じさせる。
1946年/日本/110分
監督:黒澤明
キャスト:原節子、藤田進、大河内傳次郎、杉村春子、三好栄子、河野秋武、高堂国典、志村喬