山陰の小さな港町、上終(カミハテ)で独りひっそりと商店を営む千代(高橋惠子)。 亡くなった母の店を引き継ぎ、パンを焼いては細々とそれを売って暮らしていた。 無愛想な彼女の店に来るのは、自閉症の牛乳配達の奥田(深谷健人)と町役場福祉課の須藤(水上竜士)くらいだったが、いつの頃からか見知らぬ訪問者が現れるようになる。それは店の傍にある断崖絶壁で自ら命を絶つために来た者たちだった。彼らはそれを最後の晩餐とするかのように、千代のパンと牛乳を買い求めに来るのだ。彼らが自殺するであろうと気づいていても、彼女は死にゆく人を決して止めず、ただ見送った人の靴を崖から持ち帰っていた。一方、故郷を離れ都会で暮らす千代の弟良雄(寺島進)は、仕事が思うように行かず心身ともに疲弊する日々。馴染みのスナックで知り合った新入りのさわ(平岡美保)と親しくなり、お互いの淋しさを埋めるように急速に距離を縮めていく。無口なバスの運転手(あがた森魚)が今日もまた上終(カミハテ)まで見知らぬ客を乗せてくる。「死にたいと思う人を、なぜ止めなくてはいけないのか」この言葉が千代の脳裏を反芻する…。 幼かった頃、あの断崖絶壁から飛び降りた理由の分からない父の死が、彼女の心に大きな翳を落としていた。ある日、訳ありげな母子が商店にやってくる。やはりその母親も死に場所を求めてさ迷っていたのだが…。
2012年/日本/104分
監督:山本起也
キャスト:高橋惠子 寺島進 あがた森魚 水上竜士 松尾貴史 深谷健人 平岡美保 ぎぃ子 土村芳 大西礼芳