春まだ浅いころ。この世界のどこかにある南の海辺の小さな町に、不思議な予感が漂う。「来た」プロペラ機のタラップを降り、小さなバッグひとつを手に、まっすぐに浜を歩いてくる、めがねをかけたひとりの女。待ち受けていた男と女に向かい、彼女は深々と一礼する。静かな波が寄せては返す。時を同じくして、同じプロペラ機から、もうひとりの女が降り立った。名前はタエコ(小林聡美)。大きなトランクを引きずりつつ、たよりない手描きの地図を片手に浜を歩き、奇妙ななつかしさをたたえた小さな宿・ハマダにたどり着く。出迎えたのは宿の主人・ユージ(光石研)と愛犬・コージ(ケン)。迷わずにたどり着いたタエコに彼は「才能ありますよ」と告げる。「ここにいる才能」。次の日、宿の一室で朝を迎えたタエコの足元に、不敵な微笑みをたたえためがねの女・サクラ(もたいまさこ)の姿があった。それから起こるのは、いちいち不思議なことばかりだった。
2007年/日本/106分
監督:荻上直子
脚本:荻上直子
キャスト:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ