自宅のピアノから流れるエリック・サティの「ジムノペディ」の音色。目を覚ました映画監督の古谷慎二(板尾創路)はピアノが置かれた部屋へ足を踏み入れるが、そこにはピアノを弾いていた妻の姿はない--。
古谷は久々に新作映画の撮影に入っていた。国際映画祭で高い評価を得た名声は過去のものとなり、今では低予算映画の仕事にありつくのがやっとだった。かつては「精神が研ぎ澄まされていれば、金がなくても映画だ」と、どんな条件でもやる気を失わなかったが、今では「こんな現場は映画じゃない」と愚痴っている。撮影直前になって、主演女優の安里(岡村いずみ)がラブシーンで愚図りはじめ撮影が進まない。古谷は強引に説得するが、安里と言い争いとなり、険悪な雰囲気のまま撮影は中断してしまう。
その日、古谷は昔から関係がつづく衣裳部スタッフと一夜を共にする。そして翌朝、彼女から安里が降板したことを知らされる…。映画は製作中止となり、時間を持て余した古谷は、街で会った映画専門学校の教え子・結花(芦那すみれ)の部屋に転がり込む。思わせぶりな態度で挑発してくる結花と体を重ねる古谷。雨の音に紛れてどこからかジムノペディが聞こえてくる--。
2016年/日本/83分 R-15
監督:行定勲
脚本:行定勲、堀泉杏
キャスト:板尾創路、芦那すみれ、岡村いずみ、田山由起、田嶋真弓、木嶋のりこ、西野翔、藤原季節、嶺豪一、千北雅楽、丸山昇平、川田希、鶴巻紬、遊貴まひろ、鈴木雄一郎