「離れ技」のダンスでも「孤高の芸術」でもないダンス。生きることをやんわり楽にするダンスの物語。 ダンサーの香織さんは常にこころとからだがつながっている。頭だけの理屈が先行して、からだがおいてきぼりになることなんてない。相模湾に臨む新江ノ島水族館のイルカやアシカのショーの構成と演出を手がけているときも、一番大事にしていることは「今、目の前にいる生き物。ここで会ったお客さま。その気持ちをからだで感じること!」 東京スカイツリーのすみだ水族館の飼育スタッフには、ちょっと不思議なダンスを用意。お客さまとのコミュニケーションを円滑にするレッスンです。「からだが開いてゆくと、こころも開いてゆく」「自分のからだのことがわかってゆくと、まわりの人や生き物の気配にも敏感になってゆく」。生き物が好きでナイーブな若者が、だんだん自分の殻を脱いでゆく。 そして毎週木曜日、香織さんは老いた母の介護に通います。日がな一日ベッドですごす母の「できません」「だめです」の言葉をどう受けとめればいい?母と話し、母に触れる。どうしたいのかを感じる。これも母と娘のデュエットダンス。 ダンスとは感じること。どんなに大変でも生きることを肯定すること。やわらかく背筋の伸びた香織さんの日常に、わたしたちのこころとからだを楽にする、ダンスの秘密が見えてきます。
2015年/日本/88分
監督:野中真理子
キャスト:村田香織、村田仙