京極和歌子には夫との間にひとり娘がいたが、夫の仕事内容が気に入らず、いずれは離婚して娘を引き取ろうと考えていた。その資金作りのため亡き父が集めた絵を売ることにしたが、その中には彼女が少女のころ遠く奉天からやってきた学生に描いてもらった「少女像」があった。想い出の絵を売るつもりはなかったが、“五郎”としか記憶のないG・Mというサインの入ったその絵を画廊に陳列しておけば、その人に再会出来るのではないかと夢見ていた。やがて桃山豪という男が名乗り出たが、想い出の人とは思えない。花屋の三室戸完こと通称コニイから、プロ野球のスカウト三ツ星五郎がG.Mだと聞き会いに行くが、彼は「本物は俺だが、銀座のG.Mを知らないか?」と奇妙なことを言われる。そんな折、姪である雪乃のファッションモデル志望を父親に説得させるべく大阪にやってきた和歌子は、不意に三ツ星五郎から声をかけられ「本物のG・Mは夫に逢えば判る。その人は銀座にいる」と教えられ、彼が何か秘密を握っているような気がしてならなかった。一方でコニイは、急に姿をみせなくなった子分のジープが再びヒロポン中毒になり、銀座のバー「キャロル」にいると聞く。ジープを連れ戻そうと「キャロル」の連中と大乱斗を演じたコニイは留置場へ放りこまれるが、そこでバーのマスターから「G.Mとは三室戸五郎のことで、大陸からの引揚者で年は四十才前後」と聞き、驚く。それはコニイの実兄だったのだ…。
1955年/日本/117分
監督:川島雄三
キャスト:月丘夢路、三橋達也、北原三枝、浅丘ルリ子、森繁久彌