妹島和世。金沢21世紀美術館やルーブル美術館ランス別館などを手がけ、建築界のノーベル賞とも称されるプリッカー賞を受賞した建築家。彼女は大阪芸術大学アートサイエンス学科新校舎の設計・建築にあたり大切にしたことを3つ挙げている。一つは、建物が立つ「丘」に合せた外観であること。それは周辺の環境と美しく調和する、有機的なフォルムを導き出した。さらに、建物が「開かれている」こと。様々な方向からの出入りでき、様々な方向への視界が確保できるような、内と外との自然なつながりを実現した。そして、そこが人々の「交流の場」となること。まさに、誰もが立ち寄れる、見晴らしのいい丘の上の「公園」である。その構想から完成までの、3年6か月という時間を追ったドキュメンタリー。一人の建築家の一つの建築に向き合う姿を鮮明に描き出している。監督・撮影は、ル・コルビジェ、丹下健三など数々の建築物を撮影してきた写真家 ホンマタカシ。90年代に妹島と出会い、それ以来妹島建築を撮影してきた。その彼の映像の力が、妹島の作品を通して「もう一つの作品」を作りあげた。