師兄師姉たちの協力で新たなる武器・火符加鉄罐（かふかてつかん）の開発も成功し、雁鳴湖に防御の陣を張る作業も終わりが見えた。寧缺（ねい・けつ）と夏侯（か・こう）の対決は目前に迫っていた。一方、隆慶（りゅうけい）は、洞窟で出会った謎の聖人から、知守観に保管されている通天丸を盗んでのんでしまえと唆され…。

知守観観主の息子であり、夫子の十二番目の直弟子でもある陳皮皮（ちん・ひひ）が、魔宗の聖女・唐小棠（とう・しょうとう）に想いを寄せる――それはまさに禁断の恋だった。だが、兄弟子の本心を知った寧缺（ねい・けつ）は、この恋を応援するのだった。そんななか西陵に、知守観の葉青（よう・せい）が長年の苦行を終えたとの知らせが…。

妹・夏天（か・てん）のもとを訪れ、16年前の因縁に片をつけると語った夏侯（か・こう）。「息災でお過ごしください」という彼の最後の言葉は、まるで終の別れを告げたかのように響くのだった。同じ頃、鴈鳴湖畔の寧缺（ねい・けつ）の屋敷に、夏侯からの文が届いく。そこには“明日、必勝居で待つ”と記されていた…。

道門の書に通じた道痴・葉紅魚（よう・こうぎょ）に、桑桑（そうそう）の指導を依頼する寧缺（ねい・けつ）。それは、光明大神官となる桑桑に多くを学ばせるためばかりでなく、彼女が悩まされている寒疾を和らげてやりたいという優しさだった。一方、なかなか修行の成果が出ない隆慶（りゅうけい）は、相手の力を吸い取る灰眼の術を習得し…。

15年前、林光遠（りん・こうえん）を無実の罪に陥れた――親王・李沛言（り・はいげん）は、そう告白して、自ら爵位の返上を申し出た。これを受け、唐（とう）王・李仲易（り・ちゅうえき）は夏侯（か・こう）を再び尋問する。しかし、彼は疑惑を否定したばかりか、私の罪を問える者などいるものかと、唐王の面前で居直り…。

寧缺（ねい・けつ）を狙う葉青（よう・せい）――その盾になるよう、夫子（ふうし）は李慢慢（り・まんまん）に命じた。寧缺と夏侯（か・こう）の決闘の場に、邪魔者が入らないようにしてやろうという、師の心遣いである。やがて、名だたる修行者たちの注目が集まるなか、一面氷に覆われた鴈鳴湖の上で、ついに２人は対峙した…。（完結）

師を裏切り、魂滅生（こん・めつせい）に付いた韓楓（かん・ほう）は、薬塵（やく・じん）を手に掛けたいきさつを語った。己の愚かさをショウ炎（しょう・えん）に皮肉られ、挑みかかる韓楓。しかしショウ炎は、その攻撃を異火で防ぐと、崖から身を投げて逃げ延びるのだった。傷を負い、息も絶え絶えのショウ炎の前に現れた人物――それは、神獣・紫晶翼獅王を従える少女だった。ショウ炎はすがるような思いで、彼女に丹薬をのませてくれと頼むが…。

小医仙（しょういせん）は、その特異な体質ゆえ、毒を摂取しないでいると衰弱死してしまう。何とか治してやりたいショウ炎（しょう・えん）は、指輪の中に入って治療法を探し続けていた。しかし、その間にも小医仙の体は刻一刻と限界に近づいていく。救う手だてが見つからない今、彼女の命を繋ぐには、学院にいるより毒を得られる魔獣山脈に帰すほうがいいのではないかと仲間たちは助言するも、ショウ炎は聞き入れようとせず…。

煉丹師大会に参加する迦南学院生一行は、出雲帝国の都・銀城を訪れた。彼らが客桟に到着すると、海波東（かい・はとう）の使いが。婿であるショウ炎（しょう・えん）に贈る品を預かってきたのだという。一同は豪勢な品の数々を前に色めき立つが、当のショウ炎は１人、海家に向かっていた。海波東の娘・小医仙（しょういせん）との結婚について弁明するためである。ショウ炎の来訪に上機嫌の波東だったが、事実を知った途端に顔色が変わり…。

青蓮地心火を探すために蛇人国にやってきたショウ炎（しょう・えん）と小医仙（しょういせん）。２人は、暗器と仕掛けに長けた莫（ばく）家の者たちが、蛇人を討伐している場面に出くわす。物陰からのぞいていたところを見つかって逃げ出したものの、途中で罠にかかり、莫家の当主・莫承（ばく・しょう）の前に引っ立てられてしまうのだった。莫承は、獣火の所持者と毒の体質を持つ者を同時に手に入れたことを喜ぶが…。

烙毒に侵された納蘭桀（のうらん・けつ）の命は風前の灯だった。次男と三男は、息子である自分たちが外に締め出され、姪の嫣然（えんぜん）だけが病床に呼ばれている現状に不満を抱き、遺産を独り占めにする気だと、長男である嫣然の父親を責めたてる。その後、中に呼ばれた3人は、納蘭家 第19代族長の座は嫣然に譲ると決めたことを納蘭桀から告げられた。魂殿と戦った経験もない嫣然を族長として仰ぐことに納得がいかない叔父２人は…。

母のことについて質問することすら許さない薬塵（やく・じん）の態度に、ショウ炎（しょう・えん）は困惑する。しかし、肉体を失ったことや、指輪の中で生を得る代わりに最愛の弟子を犠牲にしたことに苦しみ続ける薬塵は、すべてを語ることでショウ炎にまでつらさを味わわせたくなかった。薬塵の心を知ったショウ炎は気を取り直し、再び教えを請うことに。ショウ炎は、翌日に控えた煉丹師大会の第二試合に臨むにあたり、鼎を貸してほしいと懇願するが…。

煉丹師大会の最終戦で対峙したショウ炎（しょう・えん）と範凌（はん・りょう）。互いに作った毒薬をのませたまではよかったが、有効な解毒法を見つけられず、２人とも瀕死状態に陥ってしまう。このままではまずい――ショウ炎が考えついた策は2人同時の“降参”だった。範凌もこれを承諾したものの相手を信用できず、にらみ合いが続いて、時間は過ぎていくばかり。共倒れになっては元も子もないと、ショウ炎と範凌はそろって白旗を上げ…。

魂殿の使者の血が付いたことで、玄重尺の封印が解けた。ショウ炎（しょう・えん）に頼まれ、浮かび上がった紋様を解読した薬塵（やく・じん）は驚愕する。玄重尺は魂殿の主・魂滅生（こん・めつせい）が使っていた剣だったのだ。すぐさま玄重尺を手放すよう命じる薬塵。この剣を使い続けることで邪悪な気に囚われ、平気で人を殺すようになってしまうことを危惧したのだ。しかしショウ炎は、“人を殺すのは人で剣に罪はない”と言い張り…。

神山図の中に入り、薬草探しをするショウ炎（しょう・えん）たちは、植物なのに手足が生えた黄地龍を見つけて追いかけるうちに、禁じられていた山の裏手に入ってしまう。やっとのことで黄地龍を捕獲した瞬間、彼らの目に飛び込んできたのは、輝く大樹と高位の魔晶や丹薬の数々。宝の山に興奮しながら手に取る仲間たち同様、ショウ炎も8級以上の魔晶を袋に詰め薬塵（やく・じん）のもとへ。これで大師匠の力を取り戻せると喜ぶショウ炎だったが…。

重病だった先帝が崩御した。皇宮内で弔いの儀が行われる最中、ただならぬ風が吹き、棺の蓋が突然開いた。夜嵐（やらん）皇帝1人を除き、その場にいた者は皆、意識を失い倒れてしまっている。信じられない光景に驚く夜嵐の前で、棺の中から先帝の体が宙に浮かび上がった。先帝に憑依する血宗・範ロウ（はん・ろう）の仕業である。屍は、夜嵐に言う。魂殿に協力し、宿敵の五大家族を滅亡させれば、天下はお前のものになる、と…。

ある晩のこと、ショウ炎（しょう・えん）のあとをつける３つの人影があった。やがて、ショウ炎の前に姿を見せたのは、先日出会った商人たちだった。もらった魔晶で命が助かったと礼を述べるショウ炎。すると彼らは、「あれは女王の毒からあなたを守るために贈った物です」と告げた。商人たちは、蛇人国の者だったのだ。その後、ショウ炎の持っていた筒の中から現れた美杜莎（メデューサ）女王は、彼の首を締め上げると、奪った青蓮地心火を返すよう迫り…。

米騰山（べい・とうさん）を告発などしない――迦南学院の学生たちに魂殿の邪悪な教育をしようとしていたなんて事実無根だと信じるショウ薫児（しょう・くんじ）に対し、彼をかばえば魂殿の手先とみなされて捕らえられると、韓閑（かん・かん）は忠告する。一方で、魂殿の離魂術を使って真相を知ったショウ炎（しょう・えん）は、騰山の無実も彼の意図も承知していた。自分が動けば勝機があると、ショウ炎が騰山を説得しようとした、その時…。

息子を殺され逆上した騰刹は、青檀を標的にして陰傀宗の奥義・九陰魔玄陣を敷く。それに気づいた林動は岩大師に助けを求める。だが、岩大師にも九陰魔玄陣は破れないと知った林動は、彼の助言で夏万金が遺した宝から陣を破る方法を発見。陣を破るために必要な九陽神草符を作ろうとしていると、林琅天が現れ協力を申し出る。

陰傀宗に乗り込んだ林動は九陰魔玄陣を破り、青檀を解き放とうとする。だがそれは、息子の敵討ちをもくろんだ騰刹の罠で、林動は青檀の命を盾にした騰刹から呑噬護符の封印を解く符文を差し出すよう迫られる。そんな中、林動は青檀の命を懸けた反撃に助けられるが、深手を負った青檀は皆が見守る中、静かに息を引き取る。

青檀の死の衝撃から立ち直れない林動を励まそうと、綾清竹は林動を外に連れ出し元門を探りに行くことを伝える。一方、青檀の遺体を引き取った林琅天は、穆仟仟が青檀を蘇生させて利用するつもりだと知る。その頃、元門の禁断の地へ入り込んだ綾清竹は穆仟仟と小競り合いになるが、そこに元門の大師兄・元蒼と霊真が現れる。

ついに青檀が蘇生し、林琅天は彼女を守るために林動のもとに帰そうとする。一方、青檀はすべてを承知の上で林琅天とともにいることを選ぶ。その頃、奇物楼に戻ってきた綾清竹は、林動が雷霆護符の精神地図を解読した後、何日も行方知れずだと知る。そこで彼を捜しに出かけるが、その行き先が魔雲峰と気づいた岩大師は慌てる。

魔雲峰の雷族村に到着した綾清竹は族長に青雉の娘だと名乗る。その結果、青雉はかつて雷霆護符を奪うため雷族村を滅ぼした罪人だと糾弾され、彼女は命を狙われる。そこに林動と応歓歓が助けに現れ、難を逃れた3人は湖の底で村人たちに守られてきた雷霆護符を見つける。その頃、小貂と小炎は魔物である六王に捕まっていた。

林動と六王が戦う中、人の姿になりたい小貂は雷霆護符を手にして自分の望みを叶えるが、そのせいで林動は六王を取り逃がしてしまう。それでも自分を許してくれた林動を見た小貂は、ようやく彼を兄貴分と認める。その後、林動は奇物楼を訪ねてきた林莽から、林家の栄誉のため大炎王朝の王子のもとに出向くようにと頼まれる。

穆仟仟は林琅天に玄氷護符の在りかを教え、林動より先に手に入れるようにとけしかける。その頃、林動は大炎王朝の王子に会うため万象城を目指していた。その道中、綾清竹は林動に命を懸けてあなたを守ると自分の気持ちを伝える。それを盗み聞きして失恋気分を味わっていた応歓歓は、自分とそっくりな玄氷護符の主に出会う。

森の中で気絶していた応歓歓を見つけた林動は、自分の胸の内を応歓歓に告白し、2人の想いはようやく通じ合う。そして、死んだはずの青檀が現れたことで林琅天の企みに気づいた林動は、急いで大炎王朝の王子のもとへ。そこで林琅天に痛めつけられていた綾清竹を助け、林琅天と先を争うように玄氷護符のある族蔵に向かう。

林琅天の裏切りに深く傷ついた青檀は我を忘れ、自分は魔物だと認める。林動たちが王朝の兵士たちに襲われたその時、青檀を迎えに来た暗黒殿の殿主・波玄が助けに現れる。青檀を暗黒殿に連れて帰ると言う波玄に林動は反対。ところが青檀は、これからは自分で道を決めると言い、林動のもとを離れて暗黒殿に行くことにする。

応歓歓を3日間だけの妻にしたくない林動は、林琅天に会って空間護符を貸してほしいと頼む。それは彼女を道宗へ送り治療するためだった。だが林琅天は交換条件として、玄氷護符をもう一度開き六王を解き放つことを要求。これを拒否した林動は林琅天に捕らわれ、応歓歓は林動を助けるために命の危険を冒して再び護符を開く。

応歓歓は玄氷護符の主としての運命を受け入れ、道宗に戻って修練を始めるが、林動への未練を断ち切れないでいた。一方、応歓歓を諦めたくない林動は、三宗の弟子になることを決意し旅立つ。そして、道中で道宗にゆかりのあるすご腕の武芸者に出会う。一方、林琅天は元門に戻ったものの、良心の呵責と体の傷に苦しんでいた。

林動は太清宮に入るようにという綾清竹の勧めを断り、応歓歓と同門になるべく道宗への入門を願い出る。そして、地中の玄筋石を砕くという試練を見事にやり遂げた結果、道宗に弟子入りを許される。一方、暗黒殿に迎え入れられた青檀は、波玄から暗黒護符を守る闇の力の御し方を学び始める。するとそこに林琅天が訪ねてくる。